「ろう」「LGBT」二つのマイノリティ属性

今まで、「聴覚障害」や「ろう」を取り扱った映画というものをほとんど見たことがなくて、せいぜい『聲の形』の映画を観たくらいのもんです。あれはえぐかった。しんどかった。なぜか『君の名は』の後に暇だから、と連チャンで観てしまい脳がバグってしまったことをよく覚えてます。そんな私の推してる映画が『仮面ライダージオウOver Quartzer』です。これの何が好きって、AmazonでジオウOQについてる☆1レビューを読んで「私観点では☆5評価なんだけど、このコメントはめっちゃ分かるんだよな〜」とウンウン頷くのが好きです。推し映画をまともに酷評してくれる人を面白おかしく眺めるのが楽しいです、愉悦。それくらいにトンチキな映画なんですよ、空に吸い込まれるスカイツリーが観れるのはジオウOQだけ!Netflixで配信してるみたいです! ネトフリだったり円盤レンタルだったりでなんやかんや10回近く観てます。スカイツリーが吸い込まれるところをなんども……。
さて、なんで、そんなトンチキ映画大好きな私が「ろう」と「LGBT」を題材にした映画を観たのかというと、友人が『東京国際ろう映画祭』のスタッフをしていて、「オンラインで映画視聴どうですか?」と紹介してくれたのがきっかけです。アイキャッチがなんだかおしゃれで良さげなものを〜みたいなノリで一作品選んで観てみました。『虹色の朝が来るまで』(今井ミカ監督作品)です。ポスターがすごく綺麗な雰囲気の写真。
『虹色の朝が来るまで』 監督:今井ミカ (2018年公開)
大まかなストーリーと登場人物
群馬で暮らす華とあゆみ、二人はろう(聴覚障がい)で女性同士のカップル。華は両親にカミングアウトするものの理解を得られず、その経験から「ろう」の人たちの限られたコミュニティではなおさらカミングアウトは難しいだろう、と考えてしまう。そんな華を隣でいつも見ていた恋人のあゆみは、華を自分たちと似たような境遇の人たちの集まる世界(渋谷のバー)へと連れ出す。そこで出会うのは、ろうでありLGBTの人たち。
女性同士で交際している華とあゆみを中心に、この作品では多様なLGBTの方が出てきます。バーには女性が恋愛対象の女性(いわゆるレズビアン)、男性が恋愛対象の男性(ゲイ)、男性から女性へ性転換したママ、女性から男性に性転換し女性をパートナーに迎えた既婚者……といった4名のスタッフが働いています。この4名から勇気づけてもらう華とあゆみ、というのがこの映画の大まかなストーリーです。
日本手話・日本語字幕・英語字幕、たまに日本語対応手話(ほんの一部)
この『虹色の朝が来るまで』、通称『虹朝』に限ったことではないですが、『東京国際ろう映画祭』で集まる作品はほとんどが「(その国の)手話」「日本語字幕」「英語字幕」が同時に出てきます。登場人物が手話をしていて、その下と横に英語字幕・日本語字幕が入っている仕様なので、同時に3言語浴びれるわけです! すごい! 贅沢! 言語の勉強ができるじゃん!!
『虹朝』の特徴としては、「難しい言葉がそこまで出てこない」(専門用語がそこまで多くはない)というのも大きいのかな? と思います。日常で使われるような言葉がメインで、LGBT関連の言葉もそこまで難しいものはあまり出てきていないと思います。だからこそ、余計に、3言語で浴びる旨味が大きいのでは? と私は個人的に思っています。日常生活に即した言葉で3言語の違いを見比べられちゃう。
「冗談はよせよ」「ううん」 この「ううん」をどう表現するか?
映画は華が彼氏と別れるシーンから始まります。「好きな人ができたから別れたい」と華が彼氏に告げると、彼氏は「冗談はよせよ」と言います。それに対する華の返事は、「冗談ではないよ」のニュアンスの返事になるのですが、これがまた面白い。
このシーンも一画面で3言語を同時に見れるのですが、日本語字幕だと「ううん」の3文字。英語字幕では「I am serious.」の3単語。手話だとどうなるのか? ちょっと軽く首を振るだけです。もちろん、状況が状況だから華は真剣な表情をしているし、どこかしら申し訳なさそうにも見えます。そのたったほんの数秒(おそらく2秒くらい?)の動作を「I am serious.」と訳したのか! と思うと私はすごく感動しちゃう。
声もなくほんの2秒だけの『首振り』、それも大事な言葉なんですよ、と拾い上げ「ううん」という日本語字幕を当て、seriousと英語字幕に置き換える。このたった2秒の動作にこれだけの情報や情緒が詰め込まれてるのか! そう解釈しました。もしかしたら普段の生活や会話ではスルーしてしまいがちかもしれない、見落としてしまいそうな動作をしっかり拾い上げているところ。ここに手話言語の繊細さが表れてるような気がするのです。首を振るだけの動作、私が字幕制作担当だとすると日本語や英語字幕に起こせていたかな? そう考えるとちょっと自信がありません。
「好き」をどう表現するか? その「好き」はどういう「好き」なのか?
あゆみと華の布団の中でやりとりをするシーンがあります。他愛もない話をして戯れあう、そんな時間が愛しい、そういった感情が込み上げてきたのか、あゆみは華に「好きだよ」と伝えます。「好き」の手話も動作自体はごくごくありふれた「好き」の手話の形。(この右手の動作です。左手は「男性」を示す手話の形で、その「男性」を「好き」です、という表現になっているように見えます)慈しみの込められた、自然とこぼれるような「好きだよ」だったと思います。それは英語字幕では「I love you.」と表現されていました。
バーのスタッフである翔というゲイの男の子の学生時代のエピソード。野球部には憧れの先輩(同性)がいました。その先輩に対して、自分の秘めていた気持ちを恐る恐る告白します。「好きです」と伝えたそれは、手話の動作自体はあゆみのそれと同じ形でしたが、恐々としていて、ぎこちないような、緊張しているような感じ。英語字幕は、「I like you.」ここはloveじゃないんですよね。
なぜ違うか? というと、おそらくあゆみの「好き」はパートナーに対する親愛の「好き」。翔の「好き」は、憧れだとか、一方通行のような「好き」。リスペクトの意味合いも大きかったかもしれません。二人とも確かに「恋愛」の文脈で相手に「好き」を伝えていたんだと思いますが、それをただの「恋愛」の概念に留まらず、それぞれにとってどんな「好き」なのか? 具体的に噛み砕いて、英語字幕を作成されているんだな〜と感動しました。
手話も日本語字幕も英語字幕もそれぞれで表現の良さがあるはずです。そして、登場人物が使っている手話には表情や、仕草・動作などの情報も含まれていて、その情報も含んだ上で日本語・英語字幕を作成されているのだと思います。配信期間が72時間と限られているので厳しいといえば厳しいんですが、この3言語をよくよく見比べて見ていくとそれぞれの言語の表現方法や、言葉の選び方、ニュアンスの違いも感じ取れちゃったりするのではないかな〜!? と考えてしまいます。
日本語対応手話と日本手話のリズム感の違い
「日本で使われる手話には二種類あって〜」とかそういう話を、手話の練習やら勉強やらしているとよく聞きます。簡単にいうと、日本語を手話に起こして当てはめたような手話が日本語対応手話、らしいです。私も厳密にはよくは分かってない。この日本語対応手話・日本手話の違いを説明して、と言われても私にはしっかり説明はできないんですが、直感的に華やあゆみたちが使っている手話は日本手話っぽい気がします。
ところが、「これは、ちょっと華やあゆみの使ってる手話となんか違うな……?」と思わされる手話を使う登場人物がいました。翔の学生時代のエピソードに出てくる、翔の担任の先生です。翔の担任の先生は一生懸命、一生懸命、ややあって落ち込んでしまった翔を励まそうとします。手話を使って励まそうとします。その手話がすごくゆっくりとした手話に感じられました。先生が特別遅い、とかそういうことではないと思うんですが、この先生が中盤以降に出てくるので、それまでの間で華とあゆみたちの手話のリズムに慣れてしまったんだろうな〜、と私は個人的に解釈しています。
そういった手話のリズム感の違いにもこだわりを見せていく姿勢! 監督、かなり言語に拘っていらっしゃる……? と思ってしまいました。監督さん、もしくは字幕・英訳担当の方、かなり言語や言葉を扱うことに対して誇りやこだわりのある方ではないでしょうか? 製作陣の日本語字幕・英語字幕・手話の違いなどについてのコメントがあるのであればいつか読んでみたい!
言動の端々から伺えるLGBTへの認識
最近は、「LGBTQ」と呼ばれていると思うんですが、この映画が制作された当時は「LGBT」の呼び方が主流だった気がする。さて、映画自体には難しい言葉はあまり出てこないんですが、それでも題材が題材なので、かなり色々なLGBT関連の問題が含まされています。この映画の中で特に分かりやすいのはLGBT差別や、アウティング関連かな? 差別については、大体想像はつくと思うんですが、アウティングについては一橋大学の事件もあり、少年ジャンプ+では『青のフラッグ』なんかでも題材にされてたことがあったかな。連載当初追いかけていたけど、アウティングのくだりは本当に本当にしんどかった……。
『虹朝』もLGBTを取り扱っているからか、登場人物によっては、言動から「ウワ、このキャラが抱いているだろう偏見が露呈されてる〜!」などと感じることもあり、そういう端々の言葉遣いがリアリティがあるような気もしました。
放映当初よりは色々と啓発もされていて、認知度も高まっているとは思うのですが、そういうのに感度が高くない人はこういうのをスルーしてしまうんだろうな〜というような言い回しもあったりして、やはり、やはり、この映画の登場人物が使う「言葉」がすごく磨かれているな、という印象!
とはいっても、私は手話を全部理解できるわけではないし、LGBT含め各方面に対して感度がそこまで高いわけでもないので、おそらく私が見落としてしまっているような表現もたくさんあるんだろうな〜と思います。(絶対あるだろうから、そういうの教えて欲しい! と思ってしまう)
東京国際ろう映画祭 オンライン配信視聴方法
さて、散々『虹朝』の「言葉」へのこだわりすげー! と書き散らしたところで、じゃあ、その『虹朝』どこで観れるのよ、っていう話なんですが、オンライン配信視聴がギリギリ間に合います。(12月8日現在)
12月8日17時までにチケットを購入すれば、配信開始の12月9日20時から72時間視聴可能(つまり、12月12日20時まで)です。『虹朝』は約65分のムービーなので、12日の18時半から観れば余裕で間に合う!! 12月8日17時までにチケットを買って、12月12日の18時半までに観始めたら大丈夫!
↑嘘付きました。すみません。友人から訂正していただきました。12月9日19時までにチケットを購入すれば、配信開始の12月9日20時から72時間視聴可能(つまり、12月12日20時まで)です。『虹朝』は約65分のムービーなので、12日の18時半から観れば余裕で間に合う!! 12月9日19時までにチケットを買って、12月12日の18時半までに観始めたら大丈夫! ……こっちが正しいです! すみません!!!

東京国際ろう映画祭のHPからオンライン視聴チケットを購入して、配信時間まで待てばピュッとメールで配信用URLとパスワードが届きます。ブラウザで配信URLを開いてパスワードを入力すればお家でもカフェでもどこでもスマホ・iPad・パソコンのどれかさえあれば映画が見れちゃうってわけです。……かがく の ちから って すげー!
あっ、コンビニ支払いの方は、12月9日19時までにコンビニで入金するの忘れないように!!



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